季節のよもやま話 七夕
むかし、南陽城西の牛家庄に牛郎と呼ばれるひとりの誠実な牛飼いの少年がおりました。両親は早くに亡くなってしまい、兄夫婦のもとで暮らしていましたが、兄嫁はなにかと理由をつけては、毎日牛郎につらくあたる日々でした。
ある秋の日、兄嫁は9頭の牛を放牧するようにいいつけ、この9頭が10頭の牛に増えるまでは、家に帰ってくるなと牛郎に命じたのです。
牛を追いながら山に入った牛郎が、木陰に座りこんで途方にくれていると、そこへ白ひげの老人が現れて牛郎に問いかけます。
「いったい何を悲しんでおるのか?」
牛郎がわけを話すと、老人は笑いながら答えました。「そう嘆きなさんな、伏牛山に行きなさい、年老いた病気の牛がいるから、看病してやりなさい。病がなおれば、その牛も連れて一緒に家に帰ればよいではないか」
牛郎は、野を越え、山を越え、長く遠い道を歩き回って、ようやく老いた病牛を見つけました。
牛郎は、草を運んでは食べさせて、三日間のあいだ休まずにその老いた牛を看病しました。
すると、その老牛がおもむろに頭をあげて喋りはじめました。
「わたしはもともと天上から来た灰牛大仙という。天の掟を破ったために下界へ落とされたのだ。脚を痛めてしまって動けない。百合の露水を使ってひと月のあいだ清め続けなければこの傷はなおらない。」
それを聞いた牛郎は、昼は花の露水を取りに行き、傷を洗い清め、夜は老牛に添い寝して、昼も夜も一生懸命看病しました。
ひと月が過ぎたころ、老牛の病気は治り、歩けるようになりました。牛郎はよろこんで十頭になった牛を引き連れて家に戻りました。