季節のよもやま話 七夕
家にもどってみると、兄嫁は以前にも増して牛郎につらく当たるようになりました。老牛のとりなしもむだになるばかりか、兄嫁は逆上して、牛郎に出て行けと迫ります。牛郎はしかたなく、老牛を連れて家を出ました。
毎日ひとりで畑仕事に精を出す牛郎に、嫁を世話してやろうと考えた老牛は、天帝の娘である織女と仙女たちが下界へ下りて水浴びをする日にちを、牛郎にそっと教えてやりました。
老牛の助けを借りた牛郎は、こうして織女と知り合うことができました。たがいに好意を持ったふたりは、その後もたびたび逢瀬を重ね、織女は下界に降りて牛郎の妻になりました。
織女は天上から持ってきた蚕を皆に分けてやり、養蚕や絹織りを教えて、皆がそれまで見たこともなかったような緞子を織り上げてみせました。夫は畑を耕し、妻は機織り、仲むつまじく暮らしながら、一男一女をもうけ、しあわせな日々でした。
ところがある日、娘が下界で結婚したと知った天帝は怒り、女神の王母娘娘を下界へ遣わして、織女をむりやり天上へ連れ帰ってしまったのです。
仲を引き裂かれた牛郎は嘆き悲しみ、天上へ向かって追いかけようとしますがそれもかないません。
すると、またあの老牛が言うのです。
「わしはもうじき死ぬ、そうしたら、わしの皮で靴をつくりなさい。その靴を履けば、天にいけるから...。」 牛郎は言われたとおりにしたのです。
牛革の靴を履いた牛郎は、子供たちの手をひいて、巻き上がる雲に乗り、霧をかきわけて織女を追いかけました。
もうあと少しで織女たちに追いつきそうになったとき、王母娘娘が自分の頭からかんざしを引き抜いて、ふりむきざまにわっと一振り!
すると、怒涛のごとく波打つ天の川が現れて、牛郎と織女はとおく両岸にひきさかれ、互いに両岸を見つめあいただ泣くばかりでした。
そんなふたりの深い愛情に心を動かされた鵲(カササギ)は、一千羽のカササギを呼び集めて、天の川の向こう岸からこちら岸まで、カササギの橋をかけました。
牛郎と織女はその橋の上を駆け寄って、また会うことができたのです。それを見た王母娘娘も今度ばかりはしかたがないとあきらめて、毎年7月7日だけはカササギ橋を渡って会うことを許したということです。